「ブラック企業から洗脳されて、恐ろしい労働環境から逃げ出さない人がいる」という話を聞いたことはありますか?
今回は、ブラックの中でも超絶スーパー級のブラック企業に洗脳されていて、結果、会社と共に燃え上がった実話を紹介します。
ブラック企業からの洗脳に誰も気づかない日々
お話を聞いた人
Nさん・41歳
美容関連会社勤務(当時)
当時、私が働いていたのは美容系の会社で、勤続はそろそろ15年になることでした。
エステティックサロン、美容院、ネイルサロン、美容専門学校を全国に展開し、業績が良い時期もありました。
女性だらけの会社でしたから、仕事を離れるとまるで女子高のようなノリで、同僚もみんな仲良しでした。
いわゆる夢を熱く語り合い、会社では事あるごとに精神論が叫ばれ、洗脳系の会社だったと思います。
「残業が楽しい会社を作ろう!」とか、今思えばわけのわからないスローガンですよね。
ええ、でも渦中にいるとわからないものなんです。
残業代なんか一切出ないなか、はりきって残業しながら会社が成長するのを喜ぶ毎日でした。
ブラック企業の条件を一つ残らず満たすような、スーパーブラック企業でしたよ。
・長時間労働
・サービス残業
・自腹購入
・名前だけ幹部
・休日出勤
ま、そんなの当たり前です。
「お金よりやりがいが大切」と会社の誰もが思っている恐ろしさです。
やがて会社に倒産の前兆が現れ始める
そんな私たちの会社が徐々に傾き始め、業績が落ち始めたのです。
はっきりと業績悪化を知ることになったのは、給料の遅配でした。
最初のうちは数ヶ月に1回、給料日から2日遅れて銀行に振り込まれるくらいでしたが、やがて毎月のように遅配が繰り返されるようになります。
ブラック企業がついに、お給料まで払わなくなったのですから、本当に悲惨です。
恐ろしい事に、給料さえ約束の日にもらえない中、幹部社員は現場に恐ろしい激を飛ばします。
やる気ひとつで現状は変わるよ!
お給料が遅れるのは私たちの努力が足りないせい。
もっと頑張ろう!
こんな感じです…。
売上さえ上がれば、状況は一変する。
今は一時的に悪いだけ。
と信じて、全く疑いませんでした。
はっきり言って、バカです(笑)
私以上に無知で、やたらと純粋な幹部社員も大勢いましたよ。
なかには社員へのノルマをますますキツくしたり、自腹購入を強要するような本当のバカもいましたね。
洗脳されてる状態で会社の業績が悪くなると、目が覚めるどころか、社員と言う名の信者たちは、よりいっそう団結し始めるんですよ。
いよいよ危機的になってきたころ、ついには全く給料が出なくなりました。
そして、経費がなくなり、現場からはいろんなものが消えました。
今日、現場で使うティッシュがない
交通費がないから、スタッフが出勤できない😱
かなり末期的な状態です。
そうなっても洗脳は解けなかったですね。
特に勤続10年以上になるベテラン、店長以上の役職のあるスタッフは、半年くらいお給料出なくても、爪に火をともすような生活をしながら、それでも「会社のために…」って、頑張ってる。
まさに戦時中の日本です。
本当にバカでしょ?
今思っても、なぜあんなに見事に洗脳されていたんでしょうか。
役職のある社員は
部下をおいて、私が逃げ出すわけにはいかない。
本気で、そう思っていました。
なかには、自分の貯金を切り崩して、生活費の足りない社員の面倒をみている幹部社員もいましたからね。
ついに倒産当日。現実はここまで酷かった
それでも、ついにXデーは、やってきました。
ついに会社が破産。
その日に倒産を迎えることは、一部幹部には知らされていたようですが、ほとんどの社員は当日まで知りませんでした。
店長以上のスタッフは本社に集められ、弁護士から今後のことについての話があり、お店によってはその日の朝、スタッフに自宅待機の支持が出ました。
いわゆる夜逃げ状態です。
テナント側は、オープンするはずのお店が時間になってもオープンしないのですから、大騒ぎになり、一斉に本社の電話が鳴り始めました。
自宅待機の支持がなかったお店は、いつも通りに店舗に出勤して倒産を知り、お客様からのクレームの嵐を受けました。
エステや学校でしたから、高額の支払いを既に済ませている人が大勢いて、それもあって「金を返せ!」と大変だったんです。
倒産を聞いた生徒やお客様が、スタッフに物を投げつけたり、思いつく限りの全ての罵声を浴びせたりしたそうで…。
スタッフみんなで床が抜けるほど土下座をし、ようやく引き取ってもらったということもありました。
私はある程度の役職についていたので、本社にいました。
もう携帯電話はずーーーーっとなりっぱなし!
スタッフは皆泣いてるし、パニックです。
「とにかく、荷物を持って早く家に帰りなさい。家に無事帰ったら、改めて電話ちょうだい」
そう言うしかありませんでした。
一番ひどかったのは地方都市にあったA店。
店長のF子から電話があり、なんと、既にお金を払っているお客様が商品を受け取りに来て、激怒して暴れているのだと。
そのお客様の支払っていた額、なんと60万円です。
突然、電話の向こうで「ガシャーーーーーン!」って物が壊れる音がして。
お客様が、彼氏を連れて乗り込んできて、お店にあるものを持って帰ろうとしだして、入り口のガラスを割ったと!
さすがに「このままだとスタッフの命があぶない」とまで思いました。
お客様に怯えながら、F子が
「さっき、この現状を説明しようと部長に電話したら、折り返し電話するって言われたので待ってます。」
って震えて言うので、思わず耳を疑いましたよ。
こんな緊急なのに折り返し電話するって、F子の上司はおバカなの?
この状況下でも、F子も部長も、まだ洗脳が解けきってないんです。
神である「上司」の支持がないと、何もできないんです。
とにかく、自分の身を守りなさい!
そういって、私はF子に110番に連絡するように言いました。
F子から、電話がかかってきたのは深夜を回ったころでした。
警察に来てもらい、何とか騒動が収まったそうです。
しかし、警察からのアドバイスで
スタッフの皆さん、しばらくの間は危険ですからお一人での外出は避けてください。
と言われたそうで…。
今日も警察の保護のもと、それぞれが家に帰ったと。
これから数日は、F子がスタッフを自宅まで迎えに行き、それから少し遠くのコンビニにいって買い物をし、F子のうちに集まって食事をし、その後また各自を家まで送り届ける約束をしたそうです。
身の危険があるなんて、私、何百人って人から恨まれてるんでしょうね。
とF子は言ってました。
他にも、遠方の寮に住んでいたスタッフは、マンションに「出ていけ!」と貼り紙をされたり、家賃の支払いを求める大家さんの訪問を恐れながら、自宅で震えていましたね。
寮から実家への引っ越しも、みんな自腹でした。
私自身、会社の倒産で吹き飛んだお金は…
・未払いの給料
・退職金
・立て替えていた経費
などなどで、総額300万円くらいでしたね。
もっと役職が上の人は、900万吹き飛んだって言ってましたから、私はまだいい方です。
会社は社員を守ってくれなかった
信じていた会社は、まったく社員のことは守ってくれませんでしたよ。
経営陣は、倒産の日も一切本社には現れなかったし、現場がそこまで悲惨だったことも知らないんじゃないですかね?
改めて、いかにブラック企業で働いていたのか。
自分たちを守ってくれると信じていた上司は何だったのか。
ほんと、みじめでしたね。
それにしても、なんでそこまで洗脳されたのかって?
私の場合は、上司への尊敬とか会社への忠誠心とかじゃなくて、一緒に戦ってる上司とか部下、同僚がいたからやめられませんでしたね。
18年、人生の半分というの長い月日を過ごしてきた場所でしたから、当時は他で働くなんて想像も出来なかった。
でも、どんなに頑張っても、このまま倒産する運命なんだってのは、気づいてましたよ。
倒産した時のこと、未だに昔の仲間と話すことあるんですけどね。
「本音のところ、倒産したときホッとしたよね。あ~これで終われるんだ。」って。
実際洗脳されてる人って、傍から見てたら「絶対おかしいって!早く逃げ出しなよ!」って思うけど、中にいる本人は幸せそうだったりするでしょ?
あれ、本当に幸せなんだと思いますよ。
もう一度あの環境で働けと言われたら、絶対嫌ですけどね。
一番びっくりしたのはね、倒産してしばらくしてから、本社に荷物を片付けに行ったんですよ。
凝りもせず無給で会社の後片付けですけどね(笑)
そのとき、現場でエステティシャンたちが来ていた白衣を見て愕然としちゃって!
中華料理の厨房で使用するエプロン並に汚れてたんですよ(笑)
どんだけ長い間、制服が支給されてなかったのか…。
クリーニングに出すお金すら、残ってない状態で働いてたんですよね。
こんな汚い制服着せられてるのに、心から「売り上げさえ出せば、会社を立て直せる」と信じていたなんて、思い出しても恥ずかしいですね。
最後に
ちょっと強烈過ぎましたが、Nさんから聞いたこれ、実話です。
洗脳って怖い。
でも中にいる人たちは幸せ感じてるって、幸せとは何なのか、考えさせられます。